サンシャワー 森美術館編
東南アジアの1980年代以降の現代美術をコンピレーションする「サンシャワー:東南アジアの現代美術展」が国立新美術館と六本木ヒルズの森美術館の2館同時開催されている。
新美術館の方は既にレポートしたので、続いて森美術館の方をレポートする。
1980年代以降の東南アジアは民主化、急激な経済成長、伝統的なコミュニティーの崩壊などなど社会が大きく変動する時代で、それだけアートも先鋭化していったのだと思わざるを得ない濃密な作品が並んでいた。
壁に埋め込まれた耳。
他者の言葉にもっと耳を傾けようというメッセージである。
タイが政情不安だった頃に政治的デモで使われたバイク、スローガンの書かれた旗やノボリをコラージュしたインスタレーション。 イデオロギーの時代から経済の時代に変わろうとする瞬間を表現した作品である。
もっともすべてが政治的作品というわけでもなく、このリュウ・クンユーの作品のようにアート表現として圧倒される作品もある。
印画紙にプリントしたカラー写真をモンタージュしたもので、単に平面に並べるのではなく立体的に並べられている。
作品の大きさも大迫力である。
これもある家族を描いた一見非常にパーソナルな作品のように見える。 が、その家族の歴史の背景が見えてくるにつれ、静かなメッセージが伝わってくる。
個人的には森美術館側での展示のベスト。 実際の写真とプロジェクターの投影を組み合わせた見せ方も斬新。
プロジェクターの投影は数分おきに行われるので、ただ通り過ぎるのではなく椅子に座って投影が始まるのを待って欲しい。
一番人気があったようなのがフェリクス・バコロールによるこの作品。 東南アジアの「天気雨」つまりサンシャワーをイメージさせる、この展覧会を代表とする作品である。
ライラ・ガルセラノの「一瞬の出会いがふさわしい時もある」 新美術館と違い、森美術館では直ぐに見つけられると思う。